陰謀
「カメラのフラッシュですか?」
「そうでしょう。撮られたみたいです」
「……」
「寒くなって来ましたね。行きましょう。あのボートに乗ってください」
「えっ。あのボートは?」
「私のボートです。誰かがここまで漕いで来たんでしょう」
「誰なんでしょうか」
「わかりません」
真里衣と彼女の荷物を先にボートに乗せてから、中富は別荘に向かった。逆風が強く吹いているので、桟橋に着くまでは時間が掛かりそうだった。波もあり、中富と向き合う真里衣は不安を隠さなかった。
「こんなに辺鄙なところへ来て頂いて、恐縮です」
「……わたしの寝室はあるのでしょうか?」
「ありません。八畳ひと間でベッドはひとつ、布団もひと組みしかありません」
「……」
真里衣は更なる不安を、その美しい白い顔にあらわした。