盗んだ顔
「正直云って須藤さんが、俺たちのキューピッドなんですよね。俺も由奈も須藤さんを知ってたから……」
「……」
須藤は激しい憤りを覚えながら、対応に苦慮する自らをもどかしく思った。須藤はその店でピザを食べたが、以前のように美味しいとは思わなかった。
「風見さん。ご両親が亡くなったこと、知ってますか?」
「いつ?」
「彩芽ちゃんと風見さんが姿を消してから、三箇月くらい経つと、二人とも入院して……」
須藤は風見の両親に愛着を感じていた。その二人も死んでしまったのだと思うと急に哀しくなり、須藤は泣いた。自分に好意を寄せていた彩芽を殺し、親友だったその兄も自分が殺した。そう思うと涙が止まらなくなった。
余りにも非人道的な犯罪に手を染めさせた由奈への想いは消滅し、彼女は全く魅力を喪っていた。こんな女のために、自分は四人もの愛すべき人たちを殺してしまったのだ。
自分の両親はどうなのだろうかと、須藤は思った。だが、この顔では会いに行けないと思い直した。勤め先の工場にも、勿論顔を出すわけには行かない。風見の会社に行っても、彼の仕事ができるわけではない。