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盗んだ顔

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 その後須藤は急遽アメリカへ渡った。須藤は身長も血液型も、風見達也と同じだった。風見達也の多くの写真を、非常に腕の立つ整形外科の医師に渡した。整形手術を受けるまでには時間がかかったが、風見達也になり済まし、彼のパスポートを活用し、アメリカ合衆国内を旅してから須藤は帰国した。
『あのお店』に入って行くと、そこには以前須藤が親しくしていた男がいた。小松武は紅い帽子を被っていたが、余り似合ってはいなかった。
「小松!久しぶりだなぁ。元気だった?」
 しかし、その男は須藤を見ても無反応だった。
「あれ!?冷たいなぁ。お前から借りた金はちゃんと返したよな。あれ?まだ返してなかったか?」
 須藤の今の顔は風見達也の顔なので、借金の返済を迫られなくても当然である。須藤にとって借金を返済しなくて済むことが、嬉しい誤算だった。
「小松さん!どうしてここに?」
 須藤の背後からそう云ったのは、須藤の待ち合わせの相手の鈴木由奈だった。
「なに?お前こそどうしてここに来たんだよ」
 慌てた声でそう云ったのは小松である。
「風見さんっていうひとと約束したのよ。あっ!風見さん……」
作品名:盗んだ顔 作家名:マナーモード