みどり色のかぼちゃランプ
でも、泣いても叫んでも子鬼達は足元を素早く切りつけたかと思うと、身体をよじ登って顔を刺しに来ます。悪い妖精達はこうもりの様な小さな羽根で飛んで来ました。
ジミーやマイケルやウィルも見逃してはくれません。逃げ回ってはいるのですが、魔物達のすばしっこさと言ったら、それこそこの世の物とは思えない程なのでした。
トビーなどは地面にうずくまっているのですが、子鬼や妖精がわんさとたかって山の様になってしまいました。
そして墓地が子供達の泣き声で一杯なった時です。
「お前達! 子供達から離れろ!」
少し遠くから大きな声が聞こえてきました。そしてバタバタと何かが大勢で走ってくる様な音が聞こえたのです。
子供達が妖精の攻撃から目を守りながら盗み見ると、あのかぼちゃランプの軍団が黒いマントを翻して走って来るのが見えたのでした。
オレンジ色の少し怖い大きな顔たちの中に、一つだけ殆ど黒にしか見えない、ジミーの家のみどりのかぼちゃランプが先頭に立って走って来ました。
「お前達、いたずらは許さんぞ!」ジミーの家のジャック・オ・ランタンが叫ぶと、手に持った杖で子鬼達を薙ぎ払います。
「さあ、もの共! 魔物共を追い払え!」みどりのジャックが号令をかけると、オレンジ色のかぼちゃ達が子供らにまとわりつく子鬼や妖精を追い払ってくれたのでした。
中でもジミーのみどりかぼちゃは小さいけれどその分とても速く動いて八面六臂の大活躍を見せたのです。
ジミー達を救った後に、あのトビーにたかった魔物の山からトビーを引っ張り出したのもジミーの家のジャックでした。
そしてすっかり魔物を追い払った後で、みどりかぼちゃのジャックが言ったのです。
「さあ、お前達ちゃんと自分の子供を見つけて家まで送って帰るんだ」
オレンジのジャック・オ・ランタン達は一言も喋らずに自分の家の子供を見つけると、手を引いて帰って行きました。
でも、どの子供もときどき振り返ってはジミーの家のジャックを羨ましそうに見るのでした。
「さあジミー、うちへ帰ろう。ナオミがきっと心配している」ジャックはジミーの頭を抱き寄せて歩き始めました。
作品名:みどり色のかぼちゃランプ 作家名:郷田三郎(G3)