小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

緑の季節【第二部】

INDEX|87ページ/88ページ|

次のページ前のページ
 


翌朝、目覚まし時計が鳴る前に目覚めた覚士は、とてもすっきりしていた。
仕事の疲労感と沙耶香との緊張感にぐっすり眠れたのだと自分でも思った覚士はふと笑いの息が出た。
床に脱いだままの服を掴むと浴室へ行きシャワーを浴びた。
頭から当たるシャワーの湯が、徐々に体を目覚めさせていった。
(さて、これからが肝心だぞ。仕事、引越し、親への報告、里実や里実の両親への弁解?『さんぽみち』のママへの報告、新城さんへの挨拶か・・考えることばかりだ)
浴室から出てきてみると時間が経っていることに気づき、慌てて支度をし、部屋を飛び出して行くことになってしまった。

会社に着いた覚士の机の上にメモがあった。
覚士の送別会の日時と場所が書かれてあった。
横の席の女子社員が出勤すると「ほんとうに もうすぐお別れなんですね。寂しくなります」と声を掛けてきた。
「お世話になりました」
とくに遣り残したこともなく、引継ぎという程の業務もなく、この一年近くここに居たことを振り返っても自分がどう変わったのか、覚士は、机周りの整頓をしながら、ぼんやり考えていた。

最終日の業務を終え、上司、各部署への挨拶を済ませると、同じ事務所の仲間(といえるようになったのだろうか)と送別会を開いてくれるという店へと向かった。
会の始まりに挨拶らしき言葉を求められ、それらしい挨拶とともに自分の成し遂げたことへの思いに少し言葉が詰まった。
だが、そんな感傷は数分後には、どこかに流れていった。
いつもどおりの盛り上がりの場となったことは、覚士には楽だった。
会もお開きとなった頃、隣に里山が来て話した。
里山は、彼との順調な交際を打ち明け、結婚話も進んでいると話した。
瞳を潤ませながら話す彼女におめでとうの言葉を伝えた。
店を出るとそれぞれに言葉を掛けては、解散となった。
里山も彼と並んで帰って行った。
この日は自動車を家に置いてきた覚士は、荷物もあったのでタクシーを利用して帰った。

作品名:緑の季節【第二部】 作家名:甜茶