緑の季節【第二部】
「沙耶香ちゃん、お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「えっと、前をごめんね」
覚士はダッシュボードの中から包みを出して沙耶香に渡した。
「見ていいですか?」
沙耶香はリボンを解き、小箱を開けると誕生石のアメジストのペンダントネックレスが
入っていた。
「わあ、綺麗。あの・・着けて欲しいな」
沙耶香は、覚士の前に小箱を差し出すと、背を向けて髪を片方になびかせた。
沙耶香の白い首筋に金色のチェーンを巻きつけた。
金具を留めるのは慣れていないとなかなか厄介なもので覚士も思いのほか手間取っていた。
「はい。お待たせ」
「嬉しい。ありがとう」
微笑む沙耶香の髪を直した。
「どうして『11時55分まで』なの?」
「今日会いたかったから。5分は・・キスする時間」
「じゃあ、今夜は何回キスできるかな」
「たくさんできるね」
沙耶香は車の時計に目を向けて言った。
ふたりは互いに顔を寄せ、唇を重ねた。
左脇のレバーを引いて沙耶香のシートを少し倒した。
間近には、セーターを曲線に描いている胸があったが、あえて触れるのは止めた。
沙耶香のふっくらと柔らかい唇が覚士の内のくすぐったい感情を目覚めさせる。