緑の季節【第二部】
ほとんど片付けを終えた頃、覚士は沙耶香を後ろから抱きしめた。
「沙耶香」
覚士は、沙耶香を正面に向き直させると、手で顎を上げると沙耶香は目を閉じた。
先日の答えが出たのだろうかと、唇に触れた。
「ま・・」
「さとしでいい」
「さとし」沙耶香が呼び終わらないまでにキスをした。
覚士は、沙耶香を抱え上げるとリビングから部屋の方へと向かった。
「今夜、ここに居ていいよね」
沙耶香は、小さな声で答えたが、ほとんど頷いただけで気持ちは伝えられた。
沙耶香をベッドの横に下ろすと、腰掛けさせ、隣に座った覚士は、沙耶香を抱きしめた。
いきなり抱きしめられたはずみで声を漏らした沙耶香も覚士の肩にしな垂れた。
女性の柔らかさを間近に感じるのは、里実を最後に抱きしめた時以来だろうか。
だが覚士の戸惑いは目の前の沙耶香への思いに打ち消されてしまった。
「大丈夫?」
「うん。真壁さんなら」
覚士は、沙耶香の体を包み込むようにベッドに横たえると、手を繋ぎ、そっと触れながら慌てないで衣服をほどいていった。
足先は少し冷えていたが、触れ合う腿や絹を纏ったような素肌のしなやかな曲線の裸体は心地よいぬくもりが感じられた。
自分の高ぶる緊張を悟られないように 彼女のサインを見落とさないように言葉では伝えきれない思いを互いに確かめ合った。
しばらく覚士の腕に身を預けていた沙耶香は体を起こすと、床にすべり落ちていた布を
はおり「シャワー借りるね」と部屋を出て行った。
覚士は、天井の模様を見るかのようにぼんやり見つめていた。
「あの」
沙耶香の声にふと呼び戻された。
「あの、何か着るもの貸して」
「あっ、そうだね。スエットでいいかな。そのままでも構わないけど、寒いよね」
覚士は、バスタオルを身に巻いた沙耶香に以前にも着た事のあるスエットを出すと、自分も浴室へと入っていった。
その夜は、同じ部屋のベッドの上で眠った。