緑の季節【第二部】
その後、ふたりはたわいないおしゃべりをしたり、沙耶香の夏休みや卒業前の制作作品をデジカメで撮った写真で見たり話をしたりして一緒に過ごした。
窓から入る日差しもやや弱くなってきた頃、覚士は席を立った。
「お祝いの食事って感じじゃないけど鍋の用意がしてあるから夕飯を一緒に食べよう」
冷蔵庫の中にはすでに切り分けた食材が入っていた。
「そろそろおなかは空いたかな。鍋なら味付けってとくにいらないし適当だけどいい?
ポン酢と胡麻ダレで大丈夫?」
「ふーん、ちゃんとお炊事もなさるんですね」
「おなかが空けば何だって作るさ。口に入ればいい!くらいなものならね」
ふたりで作る食事は何となくおままごとのようで楽しかった。
鍋への入れ方も適当なら摘まみ上げみた野菜の切り方もまた会話のスパイスになっていた。
鍋に互いが箸を向け、同じ具の端と端とを摘まみあげた時には、気持ちまで繋がったような照れくささを感じた。
「ふう、おなかいっぱい。もうご馳走様です」
「うん、結構食べたね。美味しかったよ」
「真壁さんは座ってて、私が片付ける。食べ過ぎて少し動きたいし、ね」
「じゃあ、お願いしようかな。食器は一緒に運ぼう」
沙耶香は、叔母の店の手伝いもしていたからか手際良く片付けていった。
覚士は、テレビのスイッチを入れたが、沙耶香の動く姿を見つめては微笑ましく、同時に胸の奥に生まれた暖かい感情を意識していた。