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緑の季節【第二部】

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昼過ぎ、玄関の呼び鈴が鳴った。
覚士は、ドアをゆっくりと開けると、頬を強ばらせた沙耶香が立っていた。
「こんにちは」
「いらっしゃい。どうぞ」
「お邪魔します」
沙耶香を迎え入れると玄関の扉を閉めた。
どんな弁解をするのか気に掛かりながらも、冷えた体が温まるようミルクティーを注いだマグカップを沙耶香の前に置いた。
「就職決まって良かったね。おめでとう」
「ありがとうございます。前に話した地元の企業に正式に採用が決まりました。会えなかったのは、あちらに帰っていたから。きちんと決まってから真壁さんに報告したくてずっと我慢してたの」
沙耶香は、冷たい手をマグカップで温めながら静かに話した。
「じゃあ、どうして会わないって言ったの?」
「ちょっと怒らせたかった」
「どうして?」
「真壁さんいつも優しいから。私のことばかり聞いてくれるでしょ。真壁さんは大人だし、男だし、年上なんだから駄目な時は、怒っていいのに。そして、もっと知りたかったの」
「わざと怒らせて?そりゃ怒ることも笑うことも嫌なことすることもあるだろうけど、試されるのは嫌だな。沙耶ちゃんを嫌いじゃないからしていることだから、解った?」
沙耶香は、頷いた。
「真壁さんの話って何?」
「ああ、あちらに戻ることが決まった。来月の中頃にはまた引越しだ」
「そうですか。『おめでとうございます』で、いいのかな」
「ああ。ここも悪くなかったな。沙耶ちゃんに会えたから」
「そう?嬉しい」
沙耶香の笑顔がやっと和らいだ。

作品名:緑の季節【第二部】 作家名:甜茶