緑の季節【第二部】
そんな感慨深げに町をひとまわりして家に戻ると小包を届ける宅配業者が訪れていた。
「あの、うちですか?」
「真壁さんですか?真壁覚士さんで。じゃあサインでお願いします」
「どうもご苦労様」
小包を受け取ると部屋に入った。
「あれっ、さっき電話では何も言ってなかったよな」
箱を開けると、容器に小分けされた料理と手紙が入っていた。
『覚士へ
たぶん連絡がないから戻って来ないんでしょうね。
いつも通りに作ったので貴方の分送ります。
年が明けてこちらに戻って来たら、元気な顔でも見せに来てくださいね。
お年玉入れておきます。では良いお年を迎えましょう。母』
「お年玉?」
手紙と一緒に<お年玉>と書かれた小さな金封が入っていた。
覚士は、料理の入った容器を開けつまみ食いをした。
母の味に何か胸に込み上げるものがあった。
大晦日の夜、どこかの寺からの鐘の音が聞こえてきた。
テレビ中継とシンクロしていた鐘の音をいったん消した。
静かな中に響く音にわけもなく目を閉じ、聞き耳をたてて聞きいった。
そんな時、携帯電話が鳴った。
ちょうど年の変わる時刻だった。