緑の季節【第二部】
ジィージィー・・・
携帯電話がマナーモードのままだったため、バイブレータ機能が床に音を響かせた。
「はい。あっおふくろ。おはよう。どうしたの?」
何日か振りに聞く母親の声は明るかった。
「おはよう。元気にしているの?ちゃんと食べてる?」
「大丈夫だよ。何かあった?」
「貴方の車のこと、あっ待ってね。お父さんに代わるから」
慌しく受話器を受け渡す様子が伝わってくる。
「覚士か」
「親父おはよう。車のことって・・」
「いや、預かっておくのはいいが、そちらでは必要ないのか?たまには動かしてはいるからいいとは思うが」
「あ、ありがとう。駐車場もあるからそっちに帰った時に持って来てもいいかなとは思ってたんだけど。使いたい時もあるし」
「おっ、乗せたい彼女でもできたか」
「まさか。仕事にだよ。まったくまいるな。もう少しそちらで頼むよ」
「了解」
そのあと両親とたわいもない話をして時間が過ぎた。
数日後、「梅雨明け宣言」が出された。
いよいよ夏がやってくる。
覚士の生活も順調に過ぎていった。
通常の盆休みの週よりやや早く休みが貰えた覚士は、帰省することにした。