緑の季節【第二部】
「メリークリスマス」
「あっこれ」
覚士が最初に手にしたのは、あのサンドイッチだった。
「ああ、やっぱりそれからいっちゃった。でも嬉しい。今日の出来はどう?」
「うん、美味しい」
「よかった」
沙耶香もやっと料理に手をつけた。
「全部、沙耶ちゃんが頑張ったの?」
「えへへ。でも伯母さんに作り方はたくさん聞いちゃった」
「でもすごいよ。美味しい」
ほとんど食べたものの、やはり残ってしまったが沙耶香は嬉しそうだった。
「あとは車の中で話そうか」
「実は、やっぱり寒かった」と沙耶香も笑った。
車内に入って覚士は、後部座席の紙袋から包みを出し、沙耶香に手渡した。
「君のプレゼントに比べたらだけど、どうぞ」
「わぁ。開けてもいいですか?なんだろう?」
沙耶香は、派手にラッピングされている包みを丁寧に開けていった。
「えっ、これ、かわいい。ありがとうございます」
包みから取り出したそれは、いわゆるポーチというものだったが、アヒルの顔を模(かたど)ったもので大きく開くファスナーのほかにダックのくちばしがスナップで開閉できるポケットになっていた。
そして、ファスナーのストラップには大きめのふわふわな素材でできたアヒルがついていた。
「やん、このアヒル、手触りが気持ちいい」
「結構、恥ずかしいね。こういうの買うのって」
「そうだと思います。うふっ。真壁さんだと子どもにといっては まだそんな大きな子が居そうにないし、彼女といっても・・おいおい誰にって感じかな、普通は」
「そう見えるかな」
「ありがとう。沙耶香のを選んでくれる為に頑張ってくれて。それが一番のプレゼントかな」
沙耶香は、そのポーチを胸元に抱きしめた。
「あっ、忘れてた。はい、これは沙耶香から」と、包みもなく覚士の手のひらに乗せたのは、アヒルとハートのストラップだった。
「真心とアヒル。真壁さんが言ったでしょ、真心の真って。あっ塗り壁のほうが良かったかな?」
「こんなのがあるの?どうも」
沙耶香はくすっと笑うとポーチを包みなおしバッグにしまった。