緑の季節【第二部】
マンションに戻った覚士は、沙耶香が居たことでそのまま部屋に積み上げてあった荷物をほどいた。
先日、送ってもらった冬に向けての衣類や身の回り品だ。
ふと、棚に目を移すと、里美の写真立てが動いていたので元に戻した。
二日ぶりに静かな夜だった。
沙耶香のことを思い浮かべてはみるものの、いつの間にか意識は薄れ、覚士は眠ってしまった。
翌日は、冷え込む朝だった。
あの日から沙耶香からのメールも電話もなかった。
覚士もメールを打ったものの送信せずに携帯電話の中に保存されていた。
覚士の出向先の仕事もさほど忙しさがなく、淡々と日を過ごしていた。
そんなある日、元会社からのメールに覚士は心がほぐれた。
《いつもPCで通信しています水上です。今日は仕事の連絡というものではありませんが、お伝えしたくてメールを入れました。ずっと派遣で働いてきましたが、派遣もなかなか厳しいご時勢で私も契約期間が年内で打ち切られることとなりました。でも皆様からの後押しをいただき、正社員にしていただけることとなりました。真壁さんへの通信も引き続きさせていただきますので今後とも宜しくお願いいたします。
追伸:真壁さんのメール結構気に入ってます(笑)》
覚士は、忘れかけた記憶から水上を思い出しながら返信をした。
《水上さん、良かったですね。こちらこそよろしく。頑張ってください》送信。
その日の覚士はなんとなく気持ちが軽くなった気がした。