緑の季節【第二部】
マンションに着いたふたりは、それぞれの部屋に分かれてしばらく過ごした。
沙耶香は、自分の荷物をまとめた後、覚士の居る部屋をノックした。
「すみません。明日は何時頃までに支度をしたらいいですか?」
「お昼過ぎにでも出ようか」と覚士はリビングの方へ出てきた。
「はい」
「もう、足は痛まない?」
「ご心配かけました。もう大丈夫」
覚士は、沙耶香を抱き寄せた。
それほど強くではなかったので振りほどこうと思えば容易(たやす)いことだったが、沙耶香もその胸に顔をうずめながら腕を腰へと廻した。
「キスしていい?」
沙耶香は頷くと覚士の目を見つめた。
唇が触れ合うとき、沙耶香はそっとまぶたを閉じた。
一度離れたが気持ちのままに もう一度合わせた。
「じゃあ明日。おやすみ」
覚士はおでこに軽くキスをすると、部屋へと入って行った。
「おやすみなさい」
沙耶香も夢のような出来事に動揺すらなく眠りについた。