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緑の季節【第二部】

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なかなか言葉の出てこない里山を前に覚士は戸惑いながら声をかけた。
「悩みは里山さんだったの?まあ社内じゃしづらいこともあるだろうけど。僕でいいなら聞くよ」
覚士は、運ばれてきたコーヒーをすすりながら里山の言葉を待った。
里山は膝に置いた手をギュっと握ると一瞬息を止め、吐き出すように声を出した。
「・・好き・・なんです。私。・・私、真壁さんのことが好きです」
告白は、以前にもされたことがあったが、この突然の告白は、笑えないほど覚士の気持ちを重くした。
いつも親切に接してくれていたのは、出向してきた不慣れな自分を助けるものであると
思っていたし、特別な好意と誤解をされるようなことはなかったと。かといって即答できる雰囲気でないことも返答を躊躇させた。
「あ、ありがとう。ただどう答えていいか、わからないですが、里山さんにはこちらに来てからお世話になってます」
「いえ」
「だからと、気持ちを今恋愛のほうへ切り替えることを考えるには余裕がなくて」
里山は握った拳を緩めると、普段、事務所で見せる笑顔で覚士を見た。
「少し気持ちが楽になりました。また週明けからのお仕事のときも宜しくお願いします。でも私、諦めていませんから、お返事待っています」
里山が、立ち上がったので覚士も一緒に店を出た。
帰りの方向が違っていたので気まずさも後引かずそのまま別れた。

作品名:緑の季節【第二部】 作家名:甜茶