緑の季節【第二部】
その頃、覚士は仕事を片付けていた。
忙しさは、沙耶香のことでいっぱいになりそうな頭を落ち着かせるには都合が良かった。
事務所からひとりふたりと退社してゆくのも気に止めることなく作業に没頭していると
時間の経つのも忘れてしまう。
「さてと、そろそろ終了できるかな」
仕事をひと区切りつけた頃、携帯電話にメールが届いていた。
送信者は、事務所の女の子だった。
《相談に乗ってください》から始まるそれには、社からほど近いカフェが指定されていた。
以前からそれとなく悩みがあるらしいことが耳に聞こえてきていたので、きっとそのことだろうと覚士はその店に足を運んだ。
店内の片隅に送信してきた女の子と事務の里山の姿があった。
「お待たせしました」
「どうもすみません。どうぞ」
覚士は、水とおしぼりを運んできた店員にコーヒーを注文すると、少し構えて二人の前に座り直した。
「どうされましたか?」
「じゃあ、サトちゃんの話聞いてあげてください。サト、さっき私に言ってたこと、ちゃんと相談してみたら、ね」
「えっ?」
そういうと、席を立って行ってしまった。