緑の季節【第二部】
やがて沙耶香の住む所に着いた。
「はい、到着。一緒に部屋まで行ってもいいかな、荷物もあるし」
沙耶香は、まだ歩きにくかったが、後ろを着いてくる覚士を無視して部屋へと向かった。
「ここで大丈夫ですから。ありがとうございました」
鍵を開け、覚士が運んでくれた荷物を受け取ろうとしたとき、覚士はドアノブを引きドアを開けていた。
「待ってるから着替え2,3日分くらい用意できる?まだ不自由そうだし、明日一日あるけど、週末だから僕の所で過ごしたらどうかな?病院にもまた行かなきゃいけないしね。そうすれば」
「沙耶香のこと嫌じゃないの?」
「僕が沙耶ちゃんのことを嫌う理由は見当たらないよ。じゃあ用意できたら声かけてくれるかな」
外に出かけた覚士に声をかけた。
「待って。散らかっているけど、中で待ってていいですから。ほんとに真壁さんのとこにお世話になっていいの?」
頷く覚士に、沙耶香はいつものように笑顔を見せた。
“女の子の仕度は忙しい”と覚士は、足の痛みも忘れたかのように動き回る沙耶香を見てそう思った。
「これも持って行っていいですか?」
そう言って沙耶香はベッドの上の枕を指差した。
「どうぞ」
「ふ。良かった」
20分程してふたりは、そこを出発した。
帰り道、沙耶香は、空腹を満たしながらのドライブを楽しんでいるかのようだった。