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緑の季節【第二部】

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帰り道、和菓子屋で2個買い求めた。
マンションに戻った覚士は、汗ばんだ顔をバシャバシャ洗うとタオルに手を伸ばした。
(あれ?)
いつも積み上げてある場所にタオルがない。
「そっか、乾いてなかったんだ」
チッと小さく舌打ちしながら、引き出しにあったバスタオルで拭った。
買ってきた和菓子をひとつ 里実のいつの誕生日だったかに貰ったクリスタル風の写真
立ての中で微笑む里実の前に供えた。
誕生日にレストランで撮ってもらったポラロイド写真は、少し回りをカットして覚士の
カードケースに納まっていた。
「どうぞ」
覚士もグラスに冷えたお茶を入れ、カウンターになっているテーブル席で和菓子を
ほおばった。
(うん、たまには悪くないな)
そのあと、仕事の報告書をまとめ上げ、メール送信で終了した。

いつもより多めの洗濯物を下ろすと、手馴れた要領で片付けていった。
日が長くなってきたこの頃、夕暮れが遅い。
勤務の日は思いもしないことだが、日の高いうちからビールには手が伸ばしにくい。
カーテンを閉めたいところだが、心地よい風が窓から訪れるのを遮りたくはない。
覚士は、缶ビールを片手にベランダに出てみた。
思ったとおり快適空間だ。
だが遠くの空に灰黒く重そうな雲が見える。
(明日は降るかな)

作品名:緑の季節【第二部】 作家名:甜茶