緑の季節【第二部】
「どうぞ」
沙耶香は片靴を脱ぐと壁伝いにリビングへと覚士の後に着いていった。
「椅子のほうが座り易いけど、血が下がると痛いでしょ」と大きめのクッションを床に置いた。
「お邪魔します」沙耶香は、足を投げ出して床に座った。
「着替えてきていいかな」
覚士が、シャワーを使う音が聞こえてきた。
沙耶香は、部屋に残され、辺りを見渡した。
まだカーテンの閉められていない窓に自分の姿が映っているのを見た。
10分ほどで入浴を終え部屋に戻ってきた覚士は、目に大粒の涙が溢れる沙耶香に気づくと 抱きしめずにはいられなかった。
「・・・どうしたの?大丈夫だから、ね」
「ごめんなさい」
しばらく、沙耶香は覚士の胸元に顔をうずめた。
体じゅうに力がはいっている沙耶香の背中をさするように無言のまま過ごした。
ふっと力が抜けた沙耶香から抱きしめていた腕を緩めるとゆっくりと体を離した。
「もういい?(緊張の)糸が切れたのかな」
「ごめんなさい」
覚士は、チェストの中から沙耶香の着替えになりそうな服を取り出し渡した。
「シャワーは今日は無理みたいだけど着替えたら。隣の部屋に篭ってるから終わったら声かけて」
そういうと窓のカーテンを閉め、隣室へと入っていった。
沙耶香は、窮屈なスーツを脱ぐと覚士のシャツとスエットのズボンに着替えた。
「真壁さん、もういいよ」
「うん、なかなか似合うね。あっ、ちゃんと洗濯はしてあるから」
「洗面所借りていいですか?」
沙耶香は、ゆっくりと部屋を移動した。