緑の季節【第二部】
店のエントランスから数段の階段があるのだが、沙耶香はバッグの肩紐を直そうとしたとき、踏み外してしまった。
「痛い」
「大丈夫?」
「大丈夫。これくらい平気。ほらストッキング破れちゃったけど、腫れてないでしょ。
恥ずかしいな」
沙耶香は、立ち上がると歩き始めた。
「擦りむいたとこだけ、冷やして来るね」
都合良く、店の近くには小さな公園の水飲み場があった。
バックから、ハンカチを取り出すと水に浸し、足の甲のあたりを冷やした。
少し痛みが出てきた。
「やっぱり、このまま帰るのは無理だよ。せめて送って行ける様に車取りに家に寄って」
覚士は、道でタクシーを止めた。
途中、病院へとやや強引に沙耶香を連れて行った。
幸い、骨には異常はなかったが靴の履けないほどのシップ薬と包帯を巻いた足になった。
「どうしよう・・」
白い包帯と徐々に増してくる痛みに沙耶香は心細く、唇を噛んだ。
「とりあえず、僕のところに帰るよ」
覚士は、病院からタクシーで自分のマンションまで戻ることにした。
沙耶香のバッグを持ち、体を支えるように覚士は部屋に帰った。