緑の季節【第二部】
店に着くと入り口から見える席でグラスの氷をストローで混ぜて待つ沙耶香が居た。
案内係りの店員に「待ち合わせです」と告げると席へと向かった。
「お待たせ。ごめんね」
「真壁さんが謝ることない。突然来た沙耶香が悪いんだから」
「何か食べた?」
「フリードリンクで少々お腹いっぱいだけど、真壁さんは食べて。私も何か食べるから」
ふたりは、メニューからオーダーを入れると、改めて挨拶を交わした。
「よくわかったね。僕の会社」
「車内にあった紙袋で」
「そっか。就活はどう?地元に帰るんじゃなかったの?」
「そのつもりだったけど、こっちも悪くないかなって」
沙耶香は、今住んでいる所から引っ越してこの街で就職したいらしいことを覚士に相談した。
「うん、いい街だよね。僕は、年が明けたら戻ってしまうから、アドバイスはできないけど」
沙耶香は、急に黙ってしまった。
そのあとの会話のほとんどは、覚士の話に沙耶香が答えるようになった。
「そろそろ帰らないと遅くなるね。帰り大丈夫?」
「はい」
覚士が精算を済ませるとふたりは、店を出た。