緑の季節【第二部】
翌日は、目覚まし時計をかけていないのに目が覚めた。
日曜日の朝。
寝坊をしてみるのも悪くないつもりでいたのに、ほとんどいつもと変わらない時間に目覚めてしまった覚士は頭から布団をかぶった。
だがすっきり覚めた眠りは戻ることはなかった。
覚士は、手を伸ばし携帯電話を取った。
着信はないようだ。
(誰からのを期待しているんだ)
ふっと息をついた。
久し振りに何の予定もない休みを過ごした。
お盆の休みも終わり、会社もにぎやかな活気があった。
休み前は色白だった人が、色変わりしていたり、夏に惑わされて彼女ができたり、それぞれの土産を配っている人たちもいる。
そんな光景の中、覚士のところに二人の女子社員が顔を覗かせてにんまりしていた。
「見ーちゃった。あの若い彼女は誰ですか?」
「えっああ、知り合いのお嬢さん」
弁解もするつもりもなく、かといって説明するのも可笑しなものである。
「てっきり、サトちゃん誘うのかと思ったのに、ね」
二人は、先日の食事相手を勝手に想像していたらしいが、覚士にはその内容を理解するまでには至らなかった。