緑の季節【第二部】
里山は、席に戻るとメモのしわを伸ばし、四つ折りにたたみ直すとポケットにしまい、上から押さえた。
(大事なメモだったようで良かった)と覚士は思った。
自分の業務を再開し、机の書類トレイに盛り上がっている用紙を確認しながら整理していると予定していた事柄に追加された資料も増えていた。
(しばらく離れていたからな、仕方ないか)
そんな中に[社内納涼会]と書かれた紙が混じっていた。
隣にいる社員に「これは?」と尋ねると、この盆休み前にこの会社で催される恒例の飲み会らしいことがわかった。
「今日ですよね」
独り言とも取れるような声で言った。
「参加されるでしょ」
「そうなんですかー。がっかりするだろうな、あの子」
その社員はくすっと肩をあげると、仕事を続けた。
(あの子?誰だ?)
覚士もそれ以上に気に留めることもなく、続けた。
思った以上に時間を費やした作業は、[社内納涼会]のことなどいつしか忘れさせてしまった。
「じゃあお先に」
そう言って事務所の何人かが席を立って行った。
さきほど気になることを言った社員の女の子も席を立った。
「よろしかったら、遅くなっても来てくださいよ。じゃあお先に失礼します」
「あ、はい。お疲れ様でした」
結局、最後になったこの課の社員と一緒に事務所を出たが、そのまま まとめた資料とともに家路に着いた。