緑の季節【第二部】
「暑っ」
すぐに窓を閉め、エアコンのスイッチを入れた。
冷蔵庫に冷え過ぎた発泡酒があったので、飲みながら、実家へ 着いたことの報告をした。
わずかだが、荷物をほどいて部屋に散らかしたがすぐに片付ける気にはならなかった。
エアコンの風の当たる辺りの床にごろんと寝転がると、フローリングの冷たさが心持ち気持ち良かった。
ふと、目を閉じて眠りかかったとき、携帯電話が鳴った。
眉間にしわ寄せながら不機嫌に携帯電話を取るとメールの着信があった。
『沙耶香』
床に寝転がったまま、メールを開いた。
《真壁さん、今日はありがとうございました。ちゃんとお礼も言わなくてごめんなさい。楽しかったからちょっと淋しくなってしまいました。わがままなお願いをしたのに嫌な顔しないでやっぱり大人だなーって思いました。またいつかお礼にサンドイッチ作ってあげたいけど・・・。この夏一番の思い出です。ばいばい》
絵文字や顔文字が入った女の子からのメールだった。
覚士は、先ほどまでの重い気分が晴れてくるのを意識した。
《返信:疲れませんでしたか?楽しいドライブでした。ありがとう。学校も就活も頑張ってください。さようなら》
覚士は、《さようなら》の文字だけ消して、送信した。