緑の季節【第二部】
ランチメニューからオーダーをした。
料理を待つ間、沙耶香が携帯電話を取り出したので、覚士も出した。
「通信できますよね」
お互いに携帯電話をかざし合い、データの交換をした。
「お・じ・さ・ん。登録っと。よしOK!」
「おい・・」
「うそ。ちゃんと『MAKABEさん』で登録したよ。あっほんとはどんな字?」
「真心の『真』に家の『壁』」
「そう。さやかは(さんずいに少ない)に(左に耳書いてこーいうの・・おおざと)に(かおり)」
テーブルに指で描きながら説明をした。
「ふーん。苗字は?」
「んー沙耶香でいいけどー、しんじょう(新しい城)って字」
「で、このメアドね」
「ahiru-newcastle@・・ニューキャッスル」
「アヒル?」
確かに沙耶香の携帯電話のストラップやバッグのアクセサリーにも「アヒルのキャラクター」が付いていた。
「誕生日が「2」ばかりだから小学生の頃からアヒルのもののプレゼントが多かったの。
いつの間にか自分も買うようになっちゃって。でも「あひる」って呼ばれたことはないよ。口はダックっぽいらしいけど」
「じゃあ、登録は『アヒル』でと」
「嫌だー、沙耶香でいいよ」
「案外、わがままですね。スナック沙耶香。よし登録」
ふたりのテーブルに料理が運ばれてきた。
食べ始めて、やっと会話が止まったほど、ずっと話していたが、食べている時は、どちらからも話をしなくなった。