緑の季節【第二部】
沙耶香は覚士の横顔を覗き込むように見つめた。
「真壁さん、もてるでしょう」
「なに、いきなり。まあそこそこかな。ははは」
沙耶香は腕組をしてフロントガラスの方に向き直った。
「沙耶香の携帯番号知りたい?」
「うん、悪くないね。若い友達ができるのも」
「じゃあ、沙耶香にも真壁さんの教えてくれる?」
「『おじさん』で登録するなよ」
そんなテンポの良い会話をして過ごすとは、正直、覚士の考えの中にはなかったことだっただけに妙にテンションがあがっていた。
それからは、沙耶香の話の聞き手になった。
沙耶香が「嵯峨嵐山」駅から十数分歩いたところにある大学でデザインや美術を学ぶ学生であること。
誕生日が2月22日でうお座のこと。血液型がAB型であること。
今、彼はいないこと。
今回の帰省のことはお父さんに内緒のこと。など話した。