緑の季節【第二部】
5分ほどして覚士が手にお茶のペットボトルを2本持って戻って来た。
「何が良いかわからなかったけど、コレでも飲んでのんびり行きましょう」
ペットボトルを沙耶香の頬にくっ付けた。
「冷たっ」
「はい、シートベルト締めて。では出発」
そのサービスエリアを出てからの覚士は自然に話すようになった。
沙耶香も敬語と普段の言葉と入り混じった言葉で話した。
「聞いてもいいですか?」
「何?」
「真壁さんはいくつなんですか?」
「んー、まずはその質問ね」
まだ知らないお互いを尋ねるのは、興味深く、話のきっかけとしては悪くなかった。
「いくつに見える?なんてまわりくどいのは無しで、34です」
「えー34」
「その『えー』はどういう『えー』なのかな。沙耶香さんは学生?20・・」
「女性に歳を聞くんですか?19」
「15も下なのか」
沙耶香は、時々、ペットボトルを頬に当てたり、手のひらで遊ばせながら少しずつ和んでいった。
ふと、覚士の視界に沙耶香の指環が入った。
とくに指環をしていることが珍しい年齢でもなかったが、会話の話題になるかと覚士は聞いた。
「あっ、彼氏に怒られない?それ、プレゼントでしょ」
沙耶香は左手で隠した。
(しまったかな・・)