緑の季節【第二部】
車内のふたりは、お互いに話すタイミングが見つからず無言のままだった。
覚士はオーディオのスイッチを入れるといつも聞いているCDから曲が流れた。
「こんなのしかないけどいい?」
「はい」
またしばらく無言になった。
インターの入り口付近は少し混んでいたが、流れるままに高速道路へと乗った。
先ほどよりも深く踏み込んだアクセルにエンジンの音が高鳴った。
「沙耶香さん、静かですね」
「そうですか。やっぱり少し緊張してます」
「僕もです。でも安全運転しますから。気楽にしていてくださいね。座席も座り易いように直していいから。暑くないですか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
覚士は一言言うたびに緊張している自分を悟られまいとハンドルを握る手に力が入った。
「ちょっと、次のサービスエリアに入っていいですか?」
「はい」沙耶香も頷き、小声で返事をした。
間近にサービスエリアへの通路が分かれ、その曲線に沿って行った。
駐車スペースもすぐに空きが見つかり、車を停めることができた。
「沙耶香さんは、降りますか?待ってる?」
「このまま」
「じゃあ少し待っててください」
覚士は、窓を少し開けると、手洗いの方へ歩いて行った。
車内に残った沙耶香は、少し大きな息をついた。
(ふう、乗せてと頼んだものの緊張するー)