緑の季節【第二部】
覚士は支払いをするために席を立った。
「真壁さん、今日のお勘定は・・・」
「駄目ですよ。ちゃんと払わせてください。彼女が作ったとはいえ、注文したんですから」
レジのトレイに代金を置くとママに一礼した。
「では、沙耶香さんと出発します。ママ、ここの連絡先いただいていいですか?」
ママは、覚士に電話番号をメモに書いて渡した。
「わがまま言ったら言いつけてくださいね。よろしく」
「じゃあ、伯母ちゃん行ってきます」
「はい。お客様がいらっしゃるから見送らないけど、気をつけて。迷惑かけないようにね」
先に自動車のところで待っていた覚士は、トランクに沙耶香のカバンを積むと助手席の
ドアを開けた。
沙耶香は小首をかしげるような挨拶をすると車内に乗り込んだ。
ドアを閉め、自分も乗り込むとシートベルトをかけた。
「お世話になります」
改めて挨拶をした沙耶香はどこかしら 先ほどまでよりおしとやかだった。
「では行きましょうか」
覚士は、やや緊張した面持ちで車道へと車を走らせた。