緑の季節【第二部】
覚士は自動車に乗り込み、車道へ出るための停車をしている時、ルームミラーに店の扉から顔を覗かせ手を振っている女の子の姿が写ったのが目に入った。
覚士は、振り返らぬまま窓から腕を出し、軽く振ると車道へと走り出た。
街はわりと静かだった。
道路の通行はスムーズに流れていたのだが、わずかな土産を買うため、大型ショッピングセンターの駐車場に入ったときは、警備員の誘導がなければならないほど駐車スペースの確保が大変だった。
皆、帰省と行楽のための買い物客なのだろうか。
その中には、暑い一日を涼しい場所で過ごそうと訪れている客も大半いるようである。
覚士もそんな人たちに溶け込むようにショッピングセンターへと入店した。
(この辺りの土産って何がいいかな)
土産店で見かけるよく似た作りの菓子も少し寂しい。
かといって「分けられる」「いたまない」などの条件をクリアする名物を探すのはなかなか苦労なことだ。
結局、「味噌系」「あんこ系」「ういろ」を盛り込んだ焼き菓子を選んだ。
(まあらしいかな)
案外地元の銘菓というものは食べていないことが往々にしてあるものだ。
ついでに今晩の食事を買い求め、店を出た。