緑の季節【第二部】
「明後日・・え?どちらに帰られるんですか?」
「京都の方へ」
「わぁラッキーかも。ご一緒していいですか?ねえ伯母さんどう?」
「沙耶香ちゃん。いきなり無茶言って・・」
覚士はなんとなく、入店した時に耳に入ってきたふたりの会話がわかった。
「貴女も京都へ行かれるのならご一緒しますか?僕、自動車ですが」
「ますますラッキー・・かも」
屈託のない笑顔をする子だな。と覚士は思った。
「あーでもママ、初対面なのにいいの?心配でしょ」
「心配?何が?真壁さんなら大丈夫ですけど、そちらこそご迷惑でしょう」
「どうせひとりで退屈しながら渋滞を流れて行くだけですから、道連れがいるのは嬉しいですよ。ましてや可愛いお嬢さんと」
「わ、決まり!可愛いお嬢さんがお伴致します」
「沙耶香ちゃん。すみませんが宜しくお願いします」
いつの間にか、女の子はカウンターから出て覚士の横に立っていた。
「沙耶香です。宜しくお願いします」
「あ、真壁覚士です」
「まかべ・・さんね」
「はい。じゃあとりあえず明後日の朝8時、ここに迎えに来ます」
覚士は、つり銭を受け取ると軽く頭を下げて店の扉を開けた。
ママが、頭を下げている横で女の子が小さく手を振って見送っていた。