緑の季節【第二部】
カーテンの端が、覚士に触れ目覚めさせた頃は、外も部屋も夕暮れの暗さの中だった。
少し重たげに体を起こすとシャワーを浴びた。
「ふうーさっぱりした」
バスタオルを腰に巻いたまま、さきほど飲みかけたスポーツ飲料を飲み干した。
体の中を冷たい液体が流れるのがわかるような感覚とゴニョゴニョゴニョと空腹に流れ込む液体の音がした。
朝から食事といってもサンドイッチとアイスコーヒーだけだ。
「おふくろ、ついでに食べるものも置いといてくれよ」
そんなわがままな不満を口にしながら、覚士はタンスから下着とTシャツとジーンズを出して着替えた。
財布と鍵だけ手にしてサンダル履きでコンビニへと出かけた。
行きつけだったコンビニの店長がサービス品の缶ビールを2本くれた。
部屋に戻った覚士は、すぐに食べ始めた。
ジィージィーと携帯電話がどこかで鳴っている。
「おーいどこだ?」
音を頼りに探し当てた時には、鳴り止んでしまった。
着信履歴5件。メール着信3件。
(いつのまに・・)
焦りながら確認すると、元会社からの他は母親からのものだっだ。
「はい、なんだった?」
「携帯電話なんだから持ってなさい」
いきなりの母親の一声にややムッとしたが、朝のドタバタな再会から連絡を取っていなかったことにも問題はあった。
「もう家に居るの?食事は?」
「今食べたよ。飲み物ありがとう」
母親の心配は、和らいだ様子の声に変わったことで解消されたとわかった。
「明日は顔出すから、おやすみ」
元会社からのメールを確認した。
気になるのは、登録がない発信者不明な携帯電話番号。
(必要ならまた掛かってくるさ)