緑の季節【第二部】
久しぶりに自宅マンションに戻った覚士は、窓を開け、懐かしく部屋を見渡した。
部屋にこもった鈍より暑い空気と外気の暑さが入り混じる部屋にカーテンを大きく持ち上げるほどの風が吹いてきた。
夏の香り。
部屋は、母親が訪ねて来ているのだろう、何かしら片付けられているように感じる。
こういう時、親の在りがたさを思うものなのか。
安心させる親孝行と世話を焼いてもらう親孝行・・どちらも親というものには不可欠なのではないだろうか。
まるっきり、都合の良い解釈であるのだが。
覚士は、小さな音を聞いた。
まだ、エアコンもスイッチを入れてはいない。
音の出所は、キッチンからのようだ。
覚士はデンと構えた箱の扉を開けるとひんやりした冷気が流れ出してきた霞の奥に数本入っているペットボトル入りの飲料を見つけた。
「おふくろ・・・」
お腹は充分水ぶくれしていたが、スポーツ飲料が喉の乾きとともに心のなにかも潤した。
ベッドに横たわると、布団もフカフカしている気がした。
何より布団がベッドの上にあることも考えないと思いもつかないほど、当たり前のようにそこにあった。
(気持ちいいー)
覚士は、そのまま眠ってしまった。