鳥の雛
私が生まれる。
生まれる。
生まれる。
生まれる。
生れ落ちる。
堕天!
「ああ、うまれてきたくなどなかったのに」
三白眼で狭い世界をにらみつける。
なんて。
なんて小さな世界。
汚らしい。秩序だった。つまらない世界。
こんなちっぽけな世界なのに、小さな私は埋没してしまう。
ちいさい。ちいさい。
濡れている私。
震えている私。
怯えている私。
温めてくれる太陽。
涼しい風。
私を見つめる4つの目。
「お母さん。お父さん。」
奇異なものを見つめる目。
「生まれてきてごめんなさい!」
私は失敗する。
私は傲慢である。
私は愚かしく、弱弱しい。
口元に差し出されるみみずを咥える。
やっとのことで飲み下す。
そんなことですら、私にはひどく難儀な仕事なんだ。
「ああ、お母さん」
私があなたなら、
私があなたの立場であったなら。
私はこんなみすぼらしい雛は見捨てるでしょう。
こんなにも荷が勝ちすぎるものは要らないわ。
自由な羽根と、
美しい羽根と、
そんなにも麗しい声を持っているのに。
どうしてこんな卑小な生き物に、
汚らしい雛なんかに、
かまけて、つくして、
その美しい命を燃やさねばならないのか。
風を打つ羽根。
伸縮する筋肉。
神が与えたもうた造形美。
ここまで育つまでに、
幾千の幼虫の命を半ばに断ち切って、
自然の勝者としてそこに君臨する、
美しいお母さん。
頑是無い私なんかはここに捨て置いて、
あの青い空に抱かれに行けば。
あのたくましいお父さんに寄り添えば。
あの緑あふれる山を見下ろせば。
野に満ちる動物たちを、
この秩序だった美しい世界を、
存分に眺めることができたなら。
私は、
どんなにもそれが幸福であるかを知っている。
萎えた羽根が、時満ちることをまだ知らないからこそ、
あなたに与えられている自由の価値を知っている。
どうして私を擲たないのか。
私はあなたが世界を選ぶことを怨む暇すらないほどに、
圧倒的な世界の美しさを、
その誘惑を知っているのに。
生まれる。
生まれる。
生まれる。
生れ落ちる。
堕天!
「ああ、うまれてきたくなどなかったのに」
三白眼で狭い世界をにらみつける。
なんて。
なんて小さな世界。
汚らしい。秩序だった。つまらない世界。
こんなちっぽけな世界なのに、小さな私は埋没してしまう。
ちいさい。ちいさい。
濡れている私。
震えている私。
怯えている私。
温めてくれる太陽。
涼しい風。
私を見つめる4つの目。
「お母さん。お父さん。」
奇異なものを見つめる目。
「生まれてきてごめんなさい!」
私は失敗する。
私は傲慢である。
私は愚かしく、弱弱しい。
口元に差し出されるみみずを咥える。
やっとのことで飲み下す。
そんなことですら、私にはひどく難儀な仕事なんだ。
「ああ、お母さん」
私があなたなら、
私があなたの立場であったなら。
私はこんなみすぼらしい雛は見捨てるでしょう。
こんなにも荷が勝ちすぎるものは要らないわ。
自由な羽根と、
美しい羽根と、
そんなにも麗しい声を持っているのに。
どうしてこんな卑小な生き物に、
汚らしい雛なんかに、
かまけて、つくして、
その美しい命を燃やさねばならないのか。
風を打つ羽根。
伸縮する筋肉。
神が与えたもうた造形美。
ここまで育つまでに、
幾千の幼虫の命を半ばに断ち切って、
自然の勝者としてそこに君臨する、
美しいお母さん。
頑是無い私なんかはここに捨て置いて、
あの青い空に抱かれに行けば。
あのたくましいお父さんに寄り添えば。
あの緑あふれる山を見下ろせば。
野に満ちる動物たちを、
この秩序だった美しい世界を、
存分に眺めることができたなら。
私は、
どんなにもそれが幸福であるかを知っている。
萎えた羽根が、時満ちることをまだ知らないからこそ、
あなたに与えられている自由の価値を知っている。
どうして私を擲たないのか。
私はあなたが世界を選ぶことを怨む暇すらないほどに、
圧倒的な世界の美しさを、
その誘惑を知っているのに。