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ヴー・モウジーズ
ヴー・モウジーズ
novelistID. 494
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鳥の雛

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私が生まれる。
生まれる。
生まれる。
生まれる。
生れ落ちる。
堕天!
「ああ、うまれてきたくなどなかったのに」
三白眼で狭い世界をにらみつける。
なんて。
なんて小さな世界。
汚らしい。秩序だった。つまらない世界。
こんなちっぽけな世界なのに、小さな私は埋没してしまう。
ちいさい。ちいさい。
濡れている私。
震えている私。
怯えている私。
温めてくれる太陽。
涼しい風。
私を見つめる4つの目。
「お母さん。お父さん。」
奇異なものを見つめる目。
「生まれてきてごめんなさい!」
私は失敗する。
私は傲慢である。
私は愚かしく、弱弱しい。
口元に差し出されるみみずを咥える。
やっとのことで飲み下す。
そんなことですら、私にはひどく難儀な仕事なんだ。
「ああ、お母さん」
私があなたなら、
私があなたの立場であったなら。
私はこんなみすぼらしい雛は見捨てるでしょう。
こんなにも荷が勝ちすぎるものは要らないわ。
自由な羽根と、
美しい羽根と、
そんなにも麗しい声を持っているのに。
どうしてこんな卑小な生き物に、
汚らしい雛なんかに、
かまけて、つくして、
その美しい命を燃やさねばならないのか。
風を打つ羽根。
伸縮する筋肉。
神が与えたもうた造形美。
ここまで育つまでに、
幾千の幼虫の命を半ばに断ち切って、
自然の勝者としてそこに君臨する、
美しいお母さん。
頑是無い私なんかはここに捨て置いて、
あの青い空に抱かれに行けば。
あのたくましいお父さんに寄り添えば。
あの緑あふれる山を見下ろせば。
野に満ちる動物たちを、
この秩序だった美しい世界を、
存分に眺めることができたなら。
私は、
どんなにもそれが幸福であるかを知っている。
萎えた羽根が、時満ちることをまだ知らないからこそ、
あなたに与えられている自由の価値を知っている。
どうして私を擲たないのか。
私はあなたが世界を選ぶことを怨む暇すらないほどに、
圧倒的な世界の美しさを、
その誘惑を知っているのに。
作品名:鳥の雛 作家名:ヴー・モウジーズ