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熱病<Man>

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「…ちょっと寝る。病院行ったり動いたからかな…眠くなって来た」
「そうね…そうした方がいいかも。じゃ、私は帰るわ。薬はテーブルの上、冷蔵庫にアイスとか入れてあるから。何かちょっとでも食べてから薬飲みなさいよ」
立ち上がろうとした私の腕を、彼が掴んだ。
「……いてくれないか?」
熱のせいだろうか。手が熱い。
「…頼む」
男の人でも、40度もの熱を出すと不安になるのだろうか。
「……わかった」
彼の頼みを、私が断れるはずがなかった。
時計は午後4時半を指していた。

熱のせいか、布団をかけても寒がるので、勝手にクロゼットを開けて、来客用の布団を出してかける。
エアコンは乾燥するので、温度は上げずに加湿器を近付けた。
少しすると、呼びかけても彼の返事がなくなった。
規則的な寝息が聞こえる。

1時間ぐらいして、ふっ…と目を覚ました彼が
「…ちょっと楽になった」
と言った。
「そういう時に限って意外に熱が上がってるのよ。私もそう思って熱はかったら、38度だったのが40度近くまで上がってた事があった」
「へぇ…」
「熱が上がってハイになってるのかもよ。計る?」
「いい…計ったって計らなくたって同じだから…それより暑い…」
「布団、1枚取って大丈夫?本当に下がったのかな、もしかして」
「うん…悪いな」
「もうここまで来たら悪いなとか思わないでよ…病人放っておけないわ」
「一度帰ろうとしたくせに」
彼が笑った。
「…そんな事言うなら放って帰るわよ」
下ろした布団をたたんでクロゼットに入れる。
「すげぇ汗だく」
「パジャマ変えなよ。そのまま寝てると今度は汗が冷えるよ」
「うん…」
「…起きられる?」
「少しの間なら」
見ていると、動きが何かギシギシしている。油を注していないロボットのようだ。
「…痛え」
そう言いながらベッドから出る。
友達と何度か遊びには来たけど、パジャマがどこにあるのかまでは知らないし、着替えているのを見ているのも変なので、私はトイレに立った。
トイレから戻ると、まださっきのパジャマ姿の彼が、新しいパジャマを掴んだまま部屋に立っていた。
「早く着替えなってば」
「手伝って」
「子供じゃないんだから」
「体中が痛くて動きにくいんだよ。何だこれ」
「熱があるからでしょ…全く…タオルどこ?」
「クロゼットの中の引き出しの、一番上」
そこからタオルを2枚出し、お風呂でちょっと熱めのお湯に浸して絞る。
そのタオルを持って戻る。
「上は脱げるけど…屈めない…悪いけど脱がして」
「何で逆じゃないのよ!」
意味のわからない反論をしてしまった。
恋人でも家族でもない人のパジャマのズボンを脱がせるとか、何なんだろうか。
…でもここで恥ずかしがっている方が不審か…相手は病人だ。
仕方なく、ぎこちない動きで上半身を脱いだ彼にタオルを渡し、
「それで汗拭いて」
と、彼の顔を見ずに言った。
母親が子供の服を脱がせるように、何も考えずにズボンを下ろした。
体が思うように動かせず、拭けないでいる彼の背中をタオルで拭く。
「…ちょっとごめん」
そう言って、脚も拭いた。
「…さっぱりする。気持ちいい」
「なら良かった」
新しいパジャマのズボンをはかせて立ち上がる。まだ彼の上半身は何も着ていないままだった。

作品名:熱病<Man> 作家名:すのう