非色──いろにあらず──
ひまわり
めぐる季節の中で いつも鮮やかに
思い出はぼくの胸によみがえる
遠い日の思い出の 糸をたどれば
夏色の風の中に
なつかしい君の声がする
あの日 明るい縁側で
光を求めて回る ひまわりだって
本当は悲しいのかもしれないと
つぶやいた君の横顔
ぼくは黙ってみつめていた
君の笑顔が映る
ひまわり畑の向こう
ふりむけば 思い出たちが
ほほえむ
夏はいつの間にか 顔をそむけて
思い出はぼくの胸を駆け抜ける
在りし日の君が 愛した日めくり
秋を告げる風の中に
置き去りの日々だけが揺れる
あの日 ヒグラシの鳴く夕暮れ
ぼくにほほえみかけて
古い日々を捨てれば
また 新しい明日が生まれると
言っていた君の瞳を
ぼくは今でも覚えている
白い部屋の片隅
ひまわりの花を飾る
あの日 愛した君の形見に
ひまわりだって
本当は 悲しいのかもしれないと
寂しそうな君のほほえみ
命短い花のように
君の悲しみがある
ひまわり畑の向こう
ふりむけば 思い出たちが
手を振る
作品名:非色──いろにあらず── 作家名:せき あゆみ