小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

緑の季節【第一部】

INDEX|9ページ/36ページ|

次のページ前のページ
 


若葉もすっかり緑を深めた頃、覚士は27歳の誕生日を迎えた。
新婚のふたりならば、相手の喜び事は自分のことのように嬉しく感じることだろう。
ましてや結婚して初めて誕生日を迎えるとなれば、食事やプレゼントなどを用意して
はしゃいでしまうところだが盛り上がる気持ちもどこか抑えて、出勤の支度をする覚士に里実は紙包みを渡した。
「どうかしら?」
中には、ネクタイが入っていた。
「覚士さん、お誕生日おめでとう」
「ありがとう。いつ用意したの?」
「少しのお出かけくらいできるわ。ねえ今日してくれる?」
覚士は、結んだネクタイを外し、紙袋といっしょに里実に渡し、新しいネクタイを締めた。
「うん、似合う・・だろ」
里実は笑顔で頷いた。

会社では、新品のネクタイを冷やかす同僚やプレゼントと言って自分たちが昼休憩に
食べていた菓子をくれる事務の女性がいてそれなりに嬉しかった。

退社時刻を回った頃、みんなにせき立てられるように会社を出た覚士は、携帯電話の着信に気づいた。
実家からの連絡だった。
「はい、おふくろ?」
母からのお祝いの言葉と里実の様子と今日の予定を尋ねられたわずかな会話で終わった。
その後、すぐに携帯電話を鳴らしたのは、里実だった。
「どこも立ち寄らないで帰って来てね」
覚士は、電話を切ると真っすぐ家路に着いた。

家に戻ると、いい匂いが覚士を出迎えた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
テーブルの上には、いつもより豪華な料理とケーキが用意されていた。
「里実、頑張ったんだね。美味しそうだ。ありがとう」
「きっとばれちゃうから白状します。母と作りました。ケーキは買いました。
さてと、お祝いしましょ」
里実は本当に楽しそうな様子で過ごした。
後片付けは、覚士がしたが、横でニコニコ見ている里実にキスをした。

作品名:緑の季節【第一部】 作家名:甜茶