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緑の季節【第一部】

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[真壁家累代之墓]
その側面には、短い戒名と永眠の日付[行年25才 俗名里実]と刻まれている。
当時28歳の覚士が自動車を購入する為にふたりで貯めていた資金で精一杯の墓地と墓石を手に入れた。
親類たちの中には、野次馬のように無責任な言葉をかけてくる者もなくはなかったが、
覚士にとってはなんの迷いもないことだった。

「この花買った花屋さんね、僕がこんな格好してるのに『おリボンは何色で?』
なんて聞くからさ。おまかせって言ったら、ほらピンクと水色でつけてくれたんだ。
クスッ。だからそのまま買って来ちゃったよ。君の好きな色だったし。いいでしょ」
水に濡れた包装用のビニールを一度持ち上げ、水の粒を落とすと置き直した。
数滴の水滴が花びらについて花は生き生き見えた。
「里実はこの花みたいに・・・つい恥ずかしい台詞言っちゃいそうだったよ。あはは」
覚士は、手桶と柄杓を足元の傍に置いて 数珠を取り出し手を合わせた。
蝋燭(ろうそく)と線香は命日以外は立てなかった。
(里実は、けむたいの嫌だったよね。おかげで僕も煙草止められたし、未だに見られている感じさ)
「さて、和尚さんのとこ行って来るね」
覚士は手桶と柄杓を手にしてその場を離れた。
法要の日時の話も即座に決まり寺を後にした。

作品名:緑の季節【第一部】 作家名:甜茶