緑の季節【第一部】
里実の永眠るそこは、朝日が昇る時一番に当たる区画。
そういえるのは、売り出し案内の時のキャッチフレーズだったからだが、実際に覚士は
それを確かめたことはなかった。
今日の天気でもきっと明るい朝日が里実を包んだのだろうと覚士は思った。
墓地に設置されている水場から手桶と柄杓を借りると水面がキラキラするような水を
汲み、里実の所へと向かった。
「おはよう。今日はこの花にしたよ」
覚士は彼が恋人に花を送るように花束のまま墓石の真ん中に置いた。
「今日は7回目の話をお願いに来たんだ」
覚士は七回忌の法要のことをそんな風に語りかけた。
「いつものように皆さんに来て貰えばいいよね。今回で親戚の方には最後でもいいかな?ごめんね。勝手に決めてしまったけど、お義父さんやお義母さんにはこれから相談しようと思っているんだけどね」
覚士は話すのをやめ墓石の上から水を掛けながら刻まれた文字を眺めた。
水が乾いていた文字を濡らすと少し胸が締め付けられる思いになった。