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緑の季節【第一部】

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ホールの祭壇のお香の煙が今日は一段と多いようだった。
参会した親類の誰かが何度も我慢しながら咳払いしていた。
とはいえ、法要は、いつも通りしめやかに終えられた。

会食も終盤を迎えた頃、覚士の挨拶が終わろうとした時、里実の両親が席を立った。
「覚士さんちょっといいかしら」
「あ、はい」
と、里実の父親が語り始めた。
「本日は皆様ありがとうございました。会の締めを覚士君がしてくれたのですが、私どもからも一言宜しいでしょうか。
里実が去ってからこの6年。覚士君にはとても良くしてもらってきました。双方の親戚の方とも通ずることができて感謝しています。
ですが、覚士にお任せするのももう十分ではないかと・・」
「お義父さん」
無言で制すると語り続けた。
「本日で覚士君のお役目を解いて、今後は私たちでさせて頂きたく皆様にもご了承いただきたいと思います」
里実の両親の深々と下げた頭はなかなか上がらなかった。
「お義父さん、お義母さん、もういいですから。ありがとうございます」
お義母さんの瞳が潤んでいたのを白いハンカチが隠した。

作品名:緑の季節【第一部】 作家名:甜茶