緑の季節【第一部】
時は、いつの間にか四年という空間を移動していた。
覚士は、テレビのスイッチを消すと写真の中で時を止めている里実に微笑んだ。
「あちらでまた会おうな。行ってきます」
部屋のドアに鍵をかけると、やっと購入した新車に乗り込み走り始めた。
里実の墓参りと七回忌の日程を決め終えた覚士は、少しドライブをすることにした。
上着を脱ぎ後部座席に置くと車に乗り込み、シートベルトを締めゆっくりと砂利の駐車場を出た。
自動車の走りは快適だった。
ネクタイを緩め、いつもは左折する道を右折して道路を進むとまだ花輪の出ているオープンしたての店が目に入った。
外観から見て、喫茶店か軽食のできる店のようだ。
朝食を食べていない覚士は、その店の駐車場に車を止めた。
「いらっしゃいませ」
扉を開け店内を見回す覚士をそう迎えた。
「おひとりさまですか?」
「はい」
店の人に促され、一段高くなっている客席へと進み、窓際の席に着いた。
コーヒーを注文すると「モーニングをお付けしてよろしいですか?」と尋ねてきた。
(まだそんな時間なんだ)
「あ、お願いします」
しばらくして運ばれてきたモーニングセットは、白い角皿にサンドイッチとフルーツ、
小さなスイーツが盛り付けてあった。
覚士は、サンドイッチを食べて少し懐かしい驚きを感じた。
(コレ・・)
里実の作ってくれた玉子サンドに似た味がしたのだった。
(どんなひとが作ったんだろう)
カウンター奥の厨房は、座った席からは見えなかった。
覚士は、美味しく、懐かしく、嬉しい気持ちでその店を出た。
『*****』