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緑の季節【第一部】

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誰にも平等に時は流れ、季節は巡り、人の気持ちも移りゆくのだろうか?
覚士の身辺も例外ではない。
親の病気や親類の不幸。
覚士自身も会社での役職を与えられたり、新入社員が部下に付いたり、お世話になった
上司の退職があったり。
告白を受けることもあったり、飲み会で出会った女性と出かけたりすることも特別では
なくなった。
里実とのことを忘れている訳ではない。
いつもそのことが軽率な行動を抑えているのは事実としても、誠実な態度は逆に女性には近寄りやすい距離を作っていた。

朝のお天気予報コーナーの女性もあれから2代交代してこの春3代目の女性に交代した。
その女性(ひと)が登場した朝は、覚士は胸のときめきを覚えた。
少し亡き妻、里実に面影が似ていたからだ。
それ以来、天気コーナーを見てからの出社が覚士の習慣になったことは、誰も知るところではなかったことだ。
そして、この日もいつものように画面に映し出される彼女の笑顔を楽しみながら、着替えを始めた。
会社へ出掛ける為のスーツではない、ダークスーツに黒系のネクタイ。
里実の永眠る場所へ向かう支度。

作品名:緑の季節【第一部】 作家名:甜茶