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緑の季節【第一部】

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その翌年の三回忌の法要。
墓地には、ずっとここを居場所にしてきた欅の木にたくさんの緑の葉が茂っていた。
朝のお天気お姉さんの予報が今日は当たっているようだ。
雲ひとつない どこまでも透き通るような青空が広がっていた。
「おはよう。今日はいい天気だね」
覚士は手桶に汲んだ水を柄杓で墓石にかけ流しながら話した。
「花屋へ寄ったら白い花が綺麗でさ、どう?」
白い花々と緑の葉でまとめられた清楚な花の束を墓石の前に置いた。
「覚士さん」
里実の両親が声を掛けた。
「あっ、おはようございます」
「おはようございます。まあ今日も綺麗な花。いつも貴方が選んでいるの?」
「ええ。あっやっぱり変ですか?」
里実の母は持参した生花を墓石の花筒に立てながらにこにこして言葉を続けた。
「いつもありがとう。こんな墓花よりきっとあの子は嬉しいと思うわ」
それぞれに墓前に手を合わせると、ホールへと向かった。
「元気にされていますか?」
「はい。そちらにはご無沙汰してしまってすみません」
「覚士さんもお忙しいでしょうから、気になさらないでね」
一年という時間は、集まった親戚の様子を和らげ、一年ぶりの親族会を開いたかのようだった。
「覚士ちゃん、早いねぇ。ずっとひとりなの?」
「ええまあ」
親戚の中でも世話好きの伯母が声をかけてきては、ひたすら里実の亡くなった悲しみを
語る里実の叔父などさまざまな尽きない話をその日は耳にすることになった。

作品名:緑の季節【第一部】 作家名:甜茶