緑の季節【第一部】
覚士は2,3度深呼吸すると両親とともに、集まってくれた親戚と数時間の同席をした。
両親を見て、自分が彼女とツーショットでことに参加出席したことがなかったことを改めて感じた。
(里実はどんなふうに僕の横に立っているんだろう。どんな挨拶をみんなと交わすんだろう)
そう思うと里実の居ない現実に淋しさが込みあげてきた。
親戚との法要の懐石はなかなか落ち着いてはいられないのではないかと、両親と覚士は
夕食を兼ねた食事へと一席設けた。
「覚士さんお疲れ様。今日はありがとうございました」
里実の父親は、覚士にビールの瓶を傾けた。
「あっ、お義父さん、僕が」
「いやまずは君から。本当に感謝しています。本来なら私たちがやらねばならないと思っていたのに」
「そう、覚士さん、里実きっと頼もしく思っているわ」
里実の母親も柔らかな笑みで覚士に言葉をかけた。
「真壁のご両親にもいろいろこの一年お世話になりました。このような席ですがお礼を
申し上げます。さっ、お父さんも受けてください」
「淋しいことです。里実さんは良いご縁を結んでくれました。本当に娘の父というのもなれた気がしましたよ」
真壁の父は里実の父に注ぎ返した。