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緑の季節【第一部】

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その日は、朝から曇り空。
礼服に着替えるために部屋を行き来する覚士はふと、テレビの前に立ち止まった。
いつもなら時間確認と信じていない占いコーナーのために見るではなく、ついているだけのテレビだった。
「今日からお天気コーナーを担当することになりました。皆様の1日が楽しくなるよう頑張ってお伝えしたいと思います」
「はい、よろしくね」答えてしまった自分を笑ってしまった。
「では、今日のお天気です。今曇り空ですが、徐々に雲の切れ間も広がり日差しが、あっ、日が差してくるでしょう。では、各地の天気です。・・・・」
(おいおい、どこの天気だ?ここか?アノ子の頭の上だけか?)

覚士は、テーブルの上のリモコンでスイッチを切ると部屋を出た。
今日は、里実の一周忌の法要の日。
天気予報通り、青空を覆っていた雲は晴れてきた。
吹く風に少し緑の香りが混じっていた。
目を閉じ、胸いっぱいに吸い込むと、ふたりで過ごした緑地公園での木陰が思い浮かぶ。

法要の始まる時間の前に墓前へと向かった。
区画され、整備されている所のまだ新しい墓石が美しく見える。
「おはよう」
墓石が濡れている。
凛とした菊の周りに小花が散りばめられた まだ供えられたばかりの生花。
「ご両親だね。出遅れたか・・・」
覚士は、持っていた花の束をほどくと活けられた花の筒の脇に差し入れた。
手を合わせると静かに目を閉じて里実に語った。
墓地の隣にあるホールの入り口で両親と待ち合わせをしていた。
5分ほど経った頃 両親が訪れた。

作品名:緑の季節【第一部】 作家名:甜茶