緑の季節【第一部】
祭壇は、里実の両親の希望で実家に組むこととした。
「覚士さん、いつでも来てくださいね。里実も待っていますから。わがまま聞いてくださってありがとう。しばらく里帰りさせてくださいね」
「こちらこそ、お願いします。その方が僕が仕事で留守の間も里実、淋しくないから」
その日から、納骨まで里実とは別に過ごすことにはなったが、ほとんど毎日、行けなくとも三日と空けず、覚士は里実の実家へと足を運んだ。
ある日、覚士はあるパンフレットを両親に見せた。
「覚士君、こんなことをしたら将来、君の重荷になりはしないだろうか。納骨は我が家の墓にしていいんだよ」
「そうよ。真壁のご両親はなんておっしゃっているの?」
覚士は正座して話を続けた。
「うちの両親にはまだ話はしていません。とりあえずこちらに。僕の方には今週末にでも話すつもりですから」
覚士の毅然とした態度に里実の両親は「とりあえず」と保留を申し出た。
「僕の方は、おそらく大丈夫ですから」
週末には覚士と覚士の両親が里実の実家を訪れた。
「いろいろ考えて頂いているようですが、里実さんとは、いいご縁で結ばれたわけですから、覚士の気持ちを通させて頂けませんか。それに我が家にはまだ墓地がありませんので、将来的にも立てておいてもいいんじゃないかと思いましてね。まあ私が先に里実さんとご一緒することになると思いますが、はは。あっ失礼」
覚士の父は、まだ経験不足の息子のために話を進めていった。
「ありがとうございます。ほんの短い娘とのことを大事に思って頂き、親としてはありがたいことです。では、何か協力させてください」
覚士はその申し出に、ふたりで貯めた資金ですることを伝え、パンフレットの小さなお墓を選んだ。
結局、現地案内の説明と両親の申し出とで少し予算をあげたが、安らかに永眠れる場所を買うことにした。
その後の墓石の手配などを終え、無事納骨の日を迎えることができた。