緑の季節【第一部】
翌月、ふたりは初めての結婚記念日を迎えた。
何処へ出かけるわけでもなく、寄り添うように部屋の窓辺で話をした。
希望ばかりの将来の自分たちのことを語り合い、笑い合い、励まし合った。
小春日和の暖かな陽射しがふたりを包んでいた。
もう冬の気配がする秋の終わり頃、体調を崩した里実は、急遽、入院となった。
今までに見せない辛そうな里実の姿に里実の両親は覚悟した。
覚士は気丈に回復を見守り献身的に付き添った。
残業は避けたものの、そんな素振りも見せないよう会社での仕事もこなし、
病院への直行。
病院から出勤することもあった。
入院は、二週間ほどで退院することができたが、体力が落ちてしまった里実は一旦、
実家で療養することになった。
覚士にも心休まる生活が戻った。
一ヶ月ぶりに我が家に戻った里実は、何かと家の事をしようとしては覚士に止められた。
「焦らなくていいから、ふたりが困らなければ何が片付いていなくちゃ駄目ってわけじゃない。君が居るってことが僕には大事な事なんだからね」
再び、里実に家庭での穏やかな生活が戻った。