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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「神のいたずら」 第九章 失恋

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「ええ、私もそう感じました。去年の夏、高橋さんのところからの帰りに、新幹線の中で話しかけられたご婦人に、私が可哀想だって、泣いて怒ってくれた事があるの。大人だって出来ない気遣いに・・・驚いた」
「あの子は、あなたには特別の感情があるのよ・・・きっと」
「そうなんですか?先生と生徒以外にですか?」
優はそう尋ねながら本当は自分も同じように思っていることを隠していた。

「そう思わない?恋人のように感じられなかった?言い方が悪かったわね。う〜ん、碧ちゃんが優ちゃんのことそう感じていたって言うことよ」
「そう言われれば・・・手も繋いできたし、私の布団に入ってきたりしたから・・・そうなの?どういうこと?ご存知なんですか」

早苗はにこっと笑って、
「知らない方がいい・・・そういう子だって言うこと」とだけ言って黙ってしまった。

碧は裕子と一緒の布団で寝た。冷房が効いているから暑くは感じられなかった。敏則は仲がいいなあとちょっと羨ましがったが、裕子がいつになく幸せそうな表情をしていることが嬉しかった。

母親の胸に頭をつけて少し高ぶっていた感情をゆっくりと冷やすようにしていた。裕子もわが子と寝ているような気持ちになっていた。
「ねえ、変な事聞いていい?」
「なに?変な事って」
「うん・・・怒らないでね」
「怒ったりなんかしないよ」
「おじさんと仲良くしてるの?」
「仲いいよ、どうしてそんな事聞くの?」
「違うよ・・・一緒のお布団で・・・夫婦してるのっていう意味」
「まあ・・・恥ずかしいこと・・・してないわよ。もう歳だもの」
「碧のパパとママは仲がいいよ・・・この間も見ちゃったし」
「そうなの!素敵ね・・・そんなことが親子で話せるなんて」
「仲良くしなきゃダメだよ。幾つになっても夫婦ってそうした方がいいよ」
「おませさんなのね、あなたは・・・碧ちゃんは好きな子が居るの?」
「居るよ、同じクラスの子だけど」
「仲いいの?」
「うん、でも・・・してないよ。卒業するまでしないって決めたの」
「中学生だから?まだ早いって言うこと?」
「違うよ。勉強の妨げになるかも知れないって思うから」
「感心ね・・・碧ちゃん頭がいいって先生から聞いたわよ。どこの高校に行こうって考えてるの?」
「どこでもいいよ。勉強がすべてじゃないって思うから」
「何が大切だと思うの?」
「家族と愛情だよ。失ってはいけないものだから・・・」

裕子は、碧の将来にずっと係わってゆきたいと強く思った。欲しがるものは何でも買ってあげたいし、留学したければ費用も出してあげようとも思った。本当に自分の子供であって欲しいと願うからだ。

翌朝裕子は目覚めて少し汗をかいて居たので、さっぱりしようと碧を起こさないようにそっと風呂場に出かけた。まだ7時前なのに何人かもう入っている人たちが居た。お年寄りに混じって若い女性が一人見えた。それは、優だった。

「早いのね優ちゃん・・・」
「おはようございます。おば様も目が覚めたんですか?」
「碧ちゃんと寝たから、汗かいちゃったのよ。さっぱりしたくて。でも良かった、あなたに会えて・・・話したいことがあったから」
「そうでしたか・・・碧ちゃんって甘えん坊なんですよね。私のときもそうしたから・・・私もお話があったんです。先に話して下さい」
「うん、あなたの事なんだけど、前にも言ったけど隼人の事は忘れて幸せになって欲しいから、もう会うのは止めましょう。今日が最後にして・・・本当に今までありがとう」
「おば様・・・同じことをお話しようと思っていました。こちらこそありがとうございました。お元気に長生きなさって下さい。隼人さんのことは一生忘れません」
「私もよ、優ちゃんのことは一生忘れないから・・・それから、碧ちゃんのことよろしくお願いしますね。学校を卒業しても時々会ってやって頂けない?迷惑かも知れないけど、お願いしたいの」
「迷惑だなんて・・・そんな事思いませんよ。任せて下さい。私にとってもあの子は特別ですから」

朝食を済ませて、モーニングコーヒーをロビーで飲みながら、帰る前にショッピングセンターに寄って行こうと話しが決まった。ジャズドリームと呼ばれる巨大モールはアウトレット専門の店が繁盛を見せていた。

「今日は碧がおじさんとおばさんに買ってあげるよ。この前のお礼に・・・ママがお金くれたの。そうしろって」
「そんなこといいのに・・・そのお金はママに返して。買い物は前にも言ったけど隼人が残したお金でするからいいのよ、気にしないで」
「ママに怒られるよ・・・」

裕子は由紀恵に電話をかけた。

「ご無沙汰をしております・・・高橋です。今お電話して宜しいですか?」
「はい、大丈夫です。碧がお世話になりまして・・・ありがとうございます」
「いいえ、お世話だなんて・・・こちらが楽しませてもらっていますから、ありがとうございます。僭越なんですけど、わが子のように思っておりますので、お気遣いなさらないで下さい。お叱りを受けるからと碧ちゃんに言われましたので、お電話させて頂きました」
「碧に過分なプレゼントをして頂き、言葉のお礼だけでは失礼と思いましたので、少し持たせました。ご遠慮なさらずに遣わせて頂けませんか?」
「本当にありがたく思います。お礼なんて・・・碧ちゃんがここに来て頂けるだけで十分なんです。私と夫の思い通りにさせて頂けませんか?お願いします」
「はい、解りました。高橋さんに可愛がって頂き、娘も幸せです。甘えさせて頂きます。すみません、碧に代わって頂けませんか?」
「解りました。お待ちください・・・電話代わってって、お母さんが」
「ありがとう・・・もしもし、何?」
「高橋さんのお気持は頂いて頂戴。お金はあなたに渡したから好きに使っていいわ。それから、お母さん達ね帰りに名古屋に寄るから待ち合わせして一緒に帰りましょう。またメールするからそのつもりでいて」
「うん、解った・・・じゃあ切るよ」

由紀恵たちは実家から持ち帰りたいものがあったから車で帰省していた。帰りに第二名神から伊勢自動車道に入って長島インターで降りて、碧たちが居る場所に来るとメールが入った。

「ママたち車でここに来るって。私は乗って帰るから、早苗先生も優先生も一緒に帰ろう?7人乗りだから乗れるよ」
「いいのかしら・・・便乗させてもらって。ねえ優ちゃん?」
「碧ちゃん、気にしなくても電車で帰るからいいのよ」
「大丈夫だよ・・・ママとパパそんなこと気にする人じゃないから」

碧からの返信で二人も一緒に乗って帰ることが決まった。

たくさんのお店でいろんなものを買った。碧は優や早苗に見てもらってワコールのアウトレットで下着を買った。昼ごはんを食べてまた買い物に出ようとしたときに、携帯が鳴った。

「今インターを降りたよ。駐車場に車停めるから、入口付近で待っててくれない?」
「早かったね、いいよ待ってるから」
ほぼ満車状態の駐車場から3人が歩いてくるのが見えた。碧は駆け寄って、弥生と手を繋いだ。

「たくさん買ったようね・・・見せてよ」
「いいよ、お姉ちゃん、後でね。一緒に買い物しようね」