絵画レビュー
デュシャン「階段を下りる裸体2」
http://www.philamuseum.org/collections/permanent/51449.html?mulR=12328
デュシャンは人間を機械のように描き表した。だが、この絵では、各パーツ群がそれぞれの部品となってそれぞれの機能を果たしている、という、機械における部分・全体の関係はない。むしろ、この絵では、各パーツ群が時間的に関係している。機能的に関係しているわけではない。そして、その時間的な関係は、ベルグソンの主張するような「異質な持続の相互浸透」ではなく、むしろ同質な時間たちの衝突なのである。
デュシャンは階段を下りる裸体を媒体として時間を描いた。それらの時間は機械的・抽象的に同質であり、同質であるからこそ同じキャンパスに同じように描くことができる。だが、同質であるがゆえの物質的な衝突がそこには生じる。彼にとって時間とは、同質なものが互いに互いを挟み合い衝突しあう、そういう不連続な塊の連鎖だったと思われる。