絵画レビュー
ミレー「Spring」
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風景がひとつの暗い部屋の中にあり、上から明かりを照らされた、そんな印象である。手前や右側は暗く、空も暗い。なぜか中央から左寄りのあたりだけが光を浴びている。この光のぎこちなさに、春の不穏さが感じ取られる。
それだけではない。手前の二本の木は、それぞれ右と左に傾いている。これらの木は静止していながら、傾いているため運動を想起させる。あえて均衡から外れていこうとする運動。それでいながらあくまで静止し続ける、その矛盾。木の形態にも、春の不穏さが感じ取られる。
中央の木の下に、人影が見える。不穏な春の図を完成させるために、この人間は犯罪者でなければならない。屈折し、打たれ強く、行動の苦痛に勝つことができ、それでいて自分なりの美学を持っている、そういった、春そのものでなければならない。